企業にとって資金調達の手段として注目される「債権譲渡」ですが、これを適切に活用するためには、法的リスクを避けるための手続きが欠かせません。特に、債権譲渡通知を正しく行うことで、二重譲渡などのリスクを防ぎ、安心して債権を譲渡することができるよう、民法等の法令において、その手続きが明確に規定されています。
本記事では、キャッシュフロー経営の一環として債権譲渡を効果的に活用するために、近年注目を集めるSMSを活用した最新の通知方法を詳しく解説します。法的なリスク回避と共に、迅速かつ確実な手続きを行うことで、企業のキャッシュフローを安定させ、経営基盤を強化する方法を学び、実務に生かしていきましょう。
債権譲渡通知にSMSソリューションが利用可能に
かつては内容証明郵便の一択のみ
債権譲渡通知は、一般的には確定日付のある証書で債権者から債務者に通知することを指します。確定日付のある証書として、従来から内容証明郵便が広く使われてきました。内容証明郵便は、郵便局(日本郵便)が通知の内容と送付日を証明するため、通知が行われた事実を客観的に証明できます。これにより、債権譲渡が確実に相手方(債務者)に伝わり、トラブルが発生した際にも証拠として利用可能です。
また、債権譲渡通知は二重譲渡などのリスクを回避するために、通知の日時が重要です。内容証明郵便を使用することで、確定日付を取得できるため、他の債権者との優先順位を確保できます。特に、法的なトラブルを避けたい企業にとって、内容証明郵便は安心できる選択肢です。
さらに、内容証明郵便は郵便局が記録を保管するため、将来的な紛争に備えて重要な証拠を保持することができます。これらの理由から、債権譲渡通知は内容証明郵便が一般的に利用されてきました。
経産省の認定を受けたシステムを利用するSMSソリューション
NTTタウンページが提供するSMSソリューションは、経済産業省および法務省から産業競争力強化法に基づく新事業活動計画の認定を受けた事業者によって提供される情報システムを利用したサービスです。数ある商品やサービスの中で、SMSソリューションが利用するシステムが認定された背景について、少しご説明します。
日本の産業競争力強化に関する法令(産業競争力強化法等)に基づき、経済産業省をはじめとする関連省庁が中心となって、企業の成長支援や規制緩和に向けた取り組みが進められています。
この取り組みの中でNTTタウンページの提供するSMSソリューションが利用するシステムは、社会全体の一層のペーパーレス化、デジタル化を進めることを目標とするものとして、経済産業省および法務省から新事業活動計画の認定を受けることになりました。
社会への画期的な新サービスの供給の一助をめざす
SMSソリューションが利用するシステムは、安全性・確実性・簡便性・迅速性を備えた情報システムとして、債権譲渡取引の利便性向上に貢献することを経済産業省および法務省から期待されています。
従来の制度下では、債権譲渡通知の手段が事実上、内容証明郵便に限定されていた問題に対して、社会への画期的な新サービスの供給の一助となることをめざすもととされています。
債権譲渡通知に限ったことではありませんが、さまざまな手続きを電子的なやりとりのみで迅速に完結させることに対するニーズは高まる一方です。
そのため、SMSソリューションが利用するシステムを活用して債権譲渡通知をSMS送信によって行うことが、法令が定める「確定日付のある証書による通知等」とみなす特例が創設されました。
「確定日付のある証書」としての機能
本人認証が必要な固有のURL
ここからは、SMSソリューションが債権譲渡通知を行ううえで確定日付のある証書による通知として機能的に満たしていることを確認していきましょう。
SMSソリューションで債権譲渡通知を行うには、本サービスの管理画面の中で通知文書(PDFファイル)をアップロード、そのうえで相手(債務者)の携帯電話番号を入力し、SMSを送信します。この際に、送信内容ごとに固有のURLが自動生成される仕組みになっています。さらにこのURLのリンク先にアクセスした際に表示される画面の指示に従い、本人認証のための情報を入力しなければ、その通知を閲覧することができない仕様になっています。この本人認証の設定を行うのは送信元(債権譲渡人)がSMSソリューションの管理画面で行うため、セキュリティ面でも安心があります。
通知を受ける債務者にどのように送られるか
SMSの受信者(債務者)は、SMSに記載されたURLのリンク先にアクセスし、本人認証を行うと、債権譲渡通知のPDFファイルをダウンロードでき、内容を閲覧することができます。受信日時(到達日時)それ自体が確定日付となります。また、通知された日から5年間はいつでも通知内容を確認することができます。
通知内容は、受信者(債務者)の本人認証を行ったうえで表示されます。また、紙の内容証明郵便は紛失リスクや同居者へ配達される可能性もありますが、SMS送信による通知であれば他人に見られるリスク、紛失するリスクも軽減されるという点も抑えておきましょう。
秘匿性の高い通知内容が想定されますので、債権者・債務者双方にとって利点のある通知方法と言えるでしょう。
送信後5年間は通知記録の証明証も発行
最後にSMSソリューションで債権譲渡通知を行った後の通知記録について説明します。
SMS送信者(債権譲渡人)は債権譲渡通知を行った日から5年間はいつでもSMSソリューションの管理データベースにアップロードされた通知の記録を確認することができ、通知記録の証明証を発行することもできます。
内容には、宛先電話番号・送信日時・到達日時・開封日時・本人認証日時などが記録されており、CSVデータとして保管することもできます。
このように、経済産業省および法務省から産業競争力強化法に基づく新事業活動計画の認定を受けるのにふさわしい安全性、確実性、簡便性及び迅速性を備えた情報システムを利用したSMSソリューションで行う債権譲渡通知は、紙の内容証明郵便と同等、またはそれ以上の機能を提供していると言えます。
では、次に実践的にSMSソリューションを活用する方法を解説していきます。
債権譲渡通知の実践
内容証明郵便とSMSソリューションを比較
債権譲渡通知において、「確定日付のある証書」を用いることは、法的リスクを回避する上で非常に重要です。この証書には、伝統的な内容証明郵便と、近年普及しているNTTタウンページのSMSソリューションの2つの方法があります。内容証明郵便は郵便局が送付内容と日付を証明してくれるため、確実性が高く、長年信頼されてきた方法です。一方、SMSソリューションは、経済産業省および法務省から産業競争力強化法に基づく新事業活動計画の認定を受けた事業者によって提供される情報システムを利用しており、迅速かつ効率的に債権譲渡通知を行うことが可能です。また、開封確認ができるという利点もあります。どちらの方法も法令に適合しており、それぞれ異なるメリットを持つため、企業のニーズに応じて適切な手段を選択することが求められます。本記事では、これらの方法を実際にどのように運用するかを詳しく解説し、債権譲渡通知の手順を理解していただけるようにします。
内容証明郵便の送付手順
以下が内容証明郵便で通知を行う手順です。
1.通知書の作成
債権譲渡の事実を記載した通知書を作成します。内容には、債権者名・債務者名・新しい債権者名・譲渡される債権の内容などを記載します。
2.内容証明郵便の準備
通知書を3部作成します。1部は郵便局に保管、1部は債務者に送付、もう1部は手元に保管されます。
3.郵便局での手続き
郵便局で通知書を提出し、内容証明郵便として送るよう依頼します。相手側(債務者)から届いていないと言われないためにも、内容証明郵便に加えて、配達した事実を証明する「配達証明」もオプションで依頼するケースも多いようです。
4.送付と記録の保管
郵便局から債務者に通知書が送られ、郵便局が送付の記録を保管します。債権者はこの記録を手元に残すことで、債務者に対して正式に通知したことを証明できます。
SMSソリューションの場合
次にSMSソリューションを活用する場合の送付手順です。内容証明郵便と比較してご確認ください。
1.通知書の作成
債権譲渡の事実を記載した通知書を作成します。記載する内容は、内容証明郵便と同様です。紙の郵送ではありませんので、MicrosoftのWordファイル等で作成します。
※「MicrosoftWord」は米国Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
2.文書データのPDFアップロード
通知書をPDFファイルに変換し、SMSソリューションの管理画面にアップロードします。
3.SMS送信
管理画面で送信先(債務者)の携帯電話を入力し、SMS送信を行います。
4.送付と記録の保管
管理画面で送信先(債務者)への送信結果だけでなく、債務者が開封したかどうかも確認できます。
まとめ
デジタル化の進展に伴い、より迅速で効率的な手続きを求める企業から、経済産業省および法務省から産業競争力強化法に基づく新事業活動計画の認定を受けた事業者によって提供される情報システムを利用したNTTタウンページのSMSソリューションは注目を集めています。
SMSソリューションは、通知内容の開封確認が可能である点や、紙の郵便と比較してコスト面や手間の軽減が図れる点で、多くの通知を行う企業にとっては大きなメリットとなります。
本記事で解説した内容を参考に、自社のニーズに最も適した方法を選択し、適切かつ効果的に債権譲渡通知を行うことで、企業の経営効率を高めていきましょう。
2024年8月執筆