自社の債権が取引先から期限までに支払われなかった場合は、何らかの形で債権回収に向けて対応する必要があります。しかし、債権を回収するのは必ずしも容易とは限らず、取引先の状況に応じて対応を検討しなければなりません。
債権回収の必要性が生じた取引先への対応は、多くの場合慎重に行わなければならず、その方法も1つではありません。この記事では、債権回収の方法やスムーズに進めるためのポイント・注意点などを解説します。
【目次】
1.債権回収が必要になる場面
2.債権回収の7つの方法
3.債権回収をスムーズに進める方法
準備を丁寧に行う
債権回収の手段について検討する
複数のケースを想定する
債務者の財産特定には「第三者からの情報取得手続き」を使う
4. 債権回収時の注意点
消滅時効の期間は債権により異なる
分割払いに早々に応じない
債権譲渡の可能性を示唆する
5. まとめ
1.債権回収が必要になる場面
そもそも債権回収とは、「期限までに支払われなかった債権を回収するため、債権者側が具体的な行動をとる」ことをいいます。具体的には、商品の代金・工事代金等の支払いを求めるケースが該当します。
実際に債務者との間で何らかの問題が発生したケースとしては、以下のようなものが考えられます。
●債務者と連絡が取れなくなった場合
●支払いを遅らせて欲しいという連絡があった場合
●悪質なクレームによって支払いを遅らせようとする意図があった場合
●債務者が不渡りを出す、あるいは経営状況悪化がささやかれている場合 など
また、債権には消滅時効があるため、基本的に問題を長期化させても良いことはありません。よって、このような問題が発生した債権者(企業等)は、迅速に債権回収に向けて動かなければなりません。
2.債権回収の7つの方法
債権回収の主な方法としては、以下の7つがあげられます。
方法 | 詳細 |
電話・面会等による交渉 | ●債権者に支払いの意思があれば成立しやすい ●交渉に応じてもらえない場合、弁護士が第三者的に交渉を進める方法もある |
内容証明郵便での督促 | ●内容証明郵便を使い、債権・遅延損害金の金額及びそれらの根拠・支払期限・振込口座などを記載する ●確定日付が成立するため、正式な請求であるというメッセージを送るとともに、消滅時効の完成を6ヶ月猶予させることができる |
民事調停手続き | ●裁判所で当事者間の話し合いにより解決を図る制度 ●柔軟な解決方法を探るのに有効 |
支払督促 | ●簡易裁判所によって債務者に対し支払いの督促をしてもらう手続きのこと ●相手方が異議を申し立てなければ、仮執行宣言→強制執行という流れで手続きを進められる ●相手方が異議を申し立てた場合は、支払督促はその効力を失い、通常訴訟に移行する |
通常訴訟 | ●電話・面会等での交渉による支払いが難しい場合、通常訴訟を提起して支払いを求める ●相手方が争わない場合・相手方の主張に明らかに理由がない場合は、1回目・2回目の裁判期日で判決が出ることもある |
少額訴訟 | ●60万円以下の金銭の支払いを求めるケースが対象 ●原則として1回で審理を終え、即日判決が出るものの、相手が異議を申し立てた場合は審理やり直しとなる |
強制執行 | ●裁判での勝訴判決・和解調書を得たにもかかわらず、相手方が支払いに応じない場合に、債権者の申立てにより、裁判所が差し押さえた債務者の財産から債務を回収する手続き ●大きくは、不動産、在庫・設備等、預金といった3種類の執行に分けられる |
弁護士・裁判所を間に挟む形になると、それだけ債権回収に費用・時間・労力がかかる結果となります。
可能であれば、できる限り交渉による解決に向けて動くのが望ましいでしょう。
3.債権回収をスムーズに進める方法
債権回収は、やみくもに取り組んでも良い結果にはつながりにくいでしょう。以下、債権回収をスムーズに進めるための方法について解説します。
準備を丁寧に行う
債権回収を進める際は、契約内容・支払履歴・消滅時効といった債権の現状を把握しましょう。契約の各種条項にも目を通し、どのような場合に・誰から債務を回収できるのか規定を確認しておきます。
もし、不法行為によって債権が発生した場合は、その事実を法的に分析することが必要です。
債権回収の手段について検討する
債権回収の方法は、大きく分けて交渉によるもの・法的手段によるものの2種類があります。交渉を行う場合は、内容証明郵便を送付した上でのやり取りが一般的ですが、支払いという結果につながらなかった場合は法的手段へと移行します。
複数のケースを想定する
債権回収時は、債務全額の支払いを求めることが基本方針となるでしょう。しかし、利息・遅延損害金カットなどを要求される場合もあるため、譲歩してもよい基準を決めておくとスムーズです。
債務者の財産特定には「第三者からの情報取得手続き」を使う
支払督促・訴訟に至り強制執行を申し立てる場合、対象となる債務者の財産を特定しなければなりません。自力で突き止めるのは非常に難しいため、第三者からの情報取得手続を申し立て、公的機関・金融機関から情報提供を受けることが大切です。
4.債権回収時の注意点
債権がからむ問題は、往々にしてトラブルに発展しやすい傾向にあります。債権回収手続きを進める際は、以下の点に注意しましょう。
消滅時効の期間は債権により異なる
一口に債権といっても様々な種類があり、それぞれ時効期間も異なります。例えば、一般の民事債権であれば10年ですが、小切手債権になると6ヶ月と短くなります。
債権の種類によって対応スピードが変わってくるため、手続きを進める際は当該債権の時効も合わせて確認しておきたいところです。
分割払いに早々に応じない
債務の一括払いが厳しく、分割払いを提案する債務者について、債権者は「本当に債務が支払えるのかどうか」事前に確認しなければなりません。一括回収できるならそれに越したことはないため、資力を確認してから判断しましょう。
もし分割払いに応じるとしても、債務者の信用性が低ければ支払計画を作っても意味はないため、合意書作成、及び担保権の追加設定合意の規程が必要です。
債権譲渡の可能性を示唆する
債務者が債権を持っていて、その第三債務者から回収できる確度が高そうなら、債権譲渡という形で対応することも可能だと示唆しておきましょう。債権譲渡に応じられそうな状況なら、具体的な手続きをガイダンスして、確実な回収を目指すことが大切です。
5.まとめ
取引先から債権を回収する際は、取引先のスタンスに応じて適切な方法を選び、できるだけ全額回収を実現できるよう対応する必要があります。最悪の場合、訴訟に発展することも想定して、あらかじめ段取りを組んでおくのが望ましいでしょう。
特に、内容証明郵便での督促は、自社の債権に対する毅然とした態度を示す上で一定の有効性があります。より迅速な対応を検討している方は、経済産業省・法務省の「債権譲渡の通知等に関する特例に係る新事業」の認定を受けており、内容証明郵便などに代わる新たな通知手段としてご利用いただけるNTTタウンページの「SMSソリューション」もご利用ください。
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2024年2月執筆